徒然糞

徒然なるまま糞

進化不全

f:id:rntru:20220301161115j:image

ジェスモナイト,ガラスマット

30×15×5

2021


 本作品を制作した動機として、まず「自然発生」という考えがある。内臓という領域は、その本来の自由を奪う形での、物理的・科学的な干渉が可能ではあるが、自身の身体をもってしても、内臓の持つ本来の存在方法を保持しながら視覚的、意識的創造、接触などは不可能である。作為性の持たないその形がその形である必要性は、人智の及ばない歳月によって構築されている。それは、外界の環境を取り巻いて決定された形の領域であり、より「自然発生」的であることが内臓という主題を持つ作品を制作するに当たって、純度を高めるのではないかと考えた。
 充填式の発泡ウレタンは、この「自然発生」の特性を持つ素材である。このスプレーを噴射した時の外界とウレタン内の空気によって形が決まり、気体に形をまといながら、その自然発生的な状態を保ち硬化する。このような「自然発生」という視点のもと、内臓とウレタンを重ねることで制作を取り進めた。
 また、自然発生的でありながらも、その流動性とは異なった、過去の環境や歳月を裏付けるように形に取り込む内臓の記録的な特徴も取り上げた。その特徴を取り上げる際に使用した手法は、ニトリルゴムの薄い膜を利用して流動的なウレタンの形に制限的な規定を付加したものである。直接的な作為性が自然発生する形に及ばずとも、外界の環境を設定することで間接的に干渉可能でありながらも、その限界を形に表出させた。
 さらに、その形を石膏の雌型から水性FRPであるジェスモナイトに置き換えることで、コピーという科学的領域に共通する干渉方法にも不完全性があることを、制作のプロセスに交えた。
 そして形の置き換わりが起きたことにより、外界の干渉を反映させた形になりながらも、そのようなプロセスを除いた、有機的な形を持つ結果を作品とした。干渉する際に逆行的に成り立ちを想起する場合にも、観る側の数だけ形の捉え方が変わる。内臓の場合、皮膚の下で行われる形の連鎖だが、擬似的であれどそれを外界に移行することで、そのような形の連想を展開できる。